2008年6月24日火曜日

印旛沼

印旛沼の植生の保全・再生のためのワークショップメンバーになっている。今日は、今年からはじめた再生事業でのモニタリング方法について、千葉県とコンサルの方との現地打ち合わせをしてきた。

印旛沼はかつては沈水植物やアサザ・ガガブタが生育する浅い沼だったが、現在では、水草はオニビシが大群落をつくるのみで、沈水植物は完全に姿を消してしまっている。この印旛沼で、沈水植物や絶滅危惧の水草をシードバンクから復活させて系統を維持すること、水生植物の再生・生育に必要な条件を解明することをを目的としたいくつかの実験が行われている。

その一環で、沼の一角を人工的に仕切り、その中だけ沼とは異なる水位変動を与える実験をしている。オランダで類似例があるものの、日本では例のない実験だ。

印旛沼の水位は、現在では、水の需要がある春~秋の時期と冬の時期のそれぞれに定められた目標水位を維持するように管理されているが、かつては早春を低水位期・秋を高水位期とする、連続的でレンジの大きな変動が存在した。この水位変動は、透明度が低い条件下でも沈水植物の生育を可能にし、ガマ類の繁茂を抑制していた可能性がある。沼全体の水位をかつてのように変動させるのは、いろいろと困難があるので、小規模な(といっても研究者が単独では不可能な大スケールの)実験でこれを検証しようとしている。80m程度の湖岸を三角形に仕切った事業地で、今年の春から水位を下げ、現在、少しずつ水位を上昇させているところだ。

広範囲にわたりシャジクモやオオトリゲモが出現。ほかにもササバモ、コウガイモなども出現。予想はしていものの、(タネも土も撒かない)沼底から沈水がジャンジャン生えてきた光景に感激した。

しっかりデータをとって公表することが重要だ。幸い、コンサル担当者が専門性・柔軟性・機動性の高い頼もしい方で、また県担当者も丁寧な方なので心強い。事業としては成功しつつある。ただし、研究としてみたときは、水位だけでなく波浪や水質などのいくつかの条件が同時に変化していること、反復がないこと、などいくつか難しさがある。これらは他の実験の結果や先行研究の知見と組み合わせて、読み解いていくことになる。このあたり、よく考えて必要なお手伝いをしたいと考えている。