2009年2月24日火曜日

素晴らしいPhylomatic

植物(被子植物)の学名のリストを放り込むと、系統樹をつくって返してくれるウェブサイトPhylomaticはほんとうにすごい。種間比較を行う上での系統的制約の考慮の重要性は昔から指摘されていたが、なぁなぁで許されることも多かった(と思う)。でも、これからは情報不足を理由にそれを怠ることは許されなくなるだろう。
ある場所での「種数の減少」も、系統樹の枝の長さの減少、として論じると深い議論ができる。Phylomaticは保全生態学にとっても革命的な道具になるだろう。
・・・少し以前にY先生に教えてもらって、いつかはと思っていたが、実際に使ってみたら本当に驚いた。

2009年2月14日土曜日

疑似科学入門


宇宙物理学者、科学と社会についての著作も多い池内了先生の本。
池内先生のかかれたものは、文章が読みやすいだけでなく、誤魔化しがないというか、読みながら疑問に思った点はからなず後で説明があるので、読後にスッキリした気持ちになる。この本もわかりやすくて面白かった。エセ科学の問題を考えたい人にはお勧めの一冊である。

この本で「疑似科学」は三種に分類される。第一種と第二種は、それぞれ占いや超能力のようなオカルトと、一見すると科学的な用語を身にまとった根拠の不確かな言説や商品(健康食品など)とであり、これまでもエセ科学として多くの人が論じてきたものであり、それほど目新しさはない。

この本の面白いのは面白いのは、従来の科学が扱いになれていない「複雑系」に関わる問題を要素還元主義のアプローチで解釈しようとすることからくる誤解・誤用・悪用を、「疑似科学」の一つとしていることである(本書中では第三種疑似科学と呼ばれている)。環境問題、電磁波公害、狂牛病、遺伝子組み換え生物、地震予知などの問題は、原因が複雑で、因子間の関係も非線形である。1+1が2とならないような関係がたくさん組み合わされている。このような複雑系の問題に対して、要素還元アプローチを押し通すことも、また要素還元的に理解できないからといって不可知としてしまうことも、どちらも科学的な態度ではないと喝破されている。

複雑系を扱う科学の進め方と、その成果を社会に対してどのように伝えていくかということは、私が保全の問題で社会と関わるときにいつもいつも気になっていることなので、「第三種疑似科学」の指摘は見事だと思った。

たとえば、湖での植物の保全の議論では「この植物は水質をよくしますか?」というようなことを良く聞かれる。「水質のよさとは?」という問題はさておくとしても、この疑問にはズバリ・スッキリとは答えられない。複雑系である生態系の状態を表す指標の一つである水質に対して、その構成要素の一つである特定の生物種が及ぼす影響は、状況依存、すなわち他種の構成や密度、物理環境条件によって変化し、場合によっては逆方向の影響をもたらす。複雑な機械を構成する歯車を一つ取り出して「この歯車は速いか?」と考えることはできないのと同じだ。だから、上のような質問をされると、どうしても「それは状況によります」とか「刈り取って持ち出しでもすれば局所的には浄化になりますが・・・」とか、いつも歯切れの悪い答えになってしまう。

このような問題に対する研究の進め方としては、その種の系への影響の仕方の状況依存性のあり方を明らかにすること、そしてそれらの事例を総合して共通するパターンを見出すこと、が適切だろう。複雑系を扱う研究は、どうしても複雑になるし、その結果もあまり単純には表現しにくい。しかし、どうしても、世間では歯切れの良い答えが歓迎され、複雑な回答は無視されがちだ。そこに疑似科学がつけいる隙があるのだろう。複雑な内容をいかにわかりやすく説明するか、これは技術を磨くしかない。

表現技術が十分に向上するまでは、わかり難いといわれても、バカ丁寧な言い方を貫いた方がよい。かつて、テレビの取材で、私の説明が回りくどいためディレクターから短絡的な言い方を強く求められ、うっかりそれに従ってしまい、とんだ赤恥コメントが放送されてことがある。それ以来、このことは教訓にしている。

2009年2月7日土曜日

小貝川野焼き


よく晴れて空気が乾燥し、風もそこそこ。絶好の日和。
小貝川で絶滅危惧植物の保全のための野焼きを無事行うことができた。






よく燃えました。みなさま、お疲れ様でした。
あと1-2ヶ月でノウルシ、アマナ、ヒメアマナ、ヒキノカサ、エキサイゼリ、シムラニンジン、トネハナヤスリ、etc.がこの1haあまりの場所に次々と姿を現す。その後は河畔林の林床にマイヅルテンナンショウ、チョウジソウetc. 水田開発、河川改修、河畔林の伐採ですっかり氾濫原の自然を失ってしまった関東平野の、ほんの一角に残された宝石箱のような場所。

午後は菅生沼に移動し、こちらも草刈と野焼きをした。ここにも関東平野の氾濫原の自然の名残が残されており、茨城県自然史博物館や筑波大学の方々を中心とした活動で、回復傾向にある。今回は期待した範囲の全てを焼くことはできなかったが、タチスミレが生える核心部分は綺麗に焼けた。

安全にかつ綺麗に火を入れるには工夫が必要だ。風向き、周囲の状況、枯れ草の状態などをよく考えて火を入れるが、それでも上手くいかないこともある。日本の生物多様性には、火を上手く使わないと守ることがとても難しい要素が少なからずある。ヒトによる自然の管理のもっとも原始的な道具である「火」の使い方を、文化としてしっかりと伝えていく必要があるのではないだろうか。

2009年2月6日金曜日

無事じゃなかった「とりさん」

ハドソン川に無事に不時着した飛行機の交信記録が新聞に掲載されていた。
全てのエンジンが停止するという緊急事態に、落ち着いてベストの判断をして任務を全うしたパイロットの話はかっこよくて胸のすく話なので、いろいろなメディアが取り上げている。

でも、このニュースを3歳の息子に説明したときの反応は、ただ一言「鳥さんはどうなったの?」
・・エライ。そうやって物事を別の角度からみられるヒトになっておくれ。

さて、明日は小貝川と菅生沼の野焼きだ。当初は先々週に予定されていたが、悪天候で延期になった。
ここのところ天気もよく、風も吹いたので、きっと草は乾いているだろう。燃えるぞ、きっと。

2009年2月1日日曜日

やまのかいしゃは、メガネはいらないんだよ

早く帰宅した晩は子供(3歳と1歳)に絵本を読み聞かせている。休日は家にいる間のかなりの時間が絵本読みだ。いま家の子供たちがハマッているのがスズキ・コージ作品。
今日も「きゅうりさんあぶないよ」「ガブリシ」「やまのディスコ」「やまのかいしゃ」「ガッタンゴットン」あたりをヘビーローテーションで読んだ(子供は同じ本を日に何度も何度も何度も読みたがる)。

表題は「やまのかいしゃ」から。

寝坊して飛び乗った電車が会社のある町に向かわないので、成り行きにまかせて「やまの会社」に行くことにした「ほげたさん」。景色のよい山の会社で楽しく過ごし、あまり気持ちが良いので町の会社で働く仲間を山に呼ぶ。社長以下、大勢の社員が山に登ってきて楽しく過ごすのだが、「やまのかいしゃはもうからないので」、会社の仲間はまた元気に山をおりて町を降りていく。でもほげたさんは山の会社を任され、そのままいまでも楽しくやっている。という話。ほげたさんが会社に行きたくないわけではないこと、社長や会社の仲間もほげたさんを咎める様子がないことなどの設定が、この本を魅力的にしているのだろう。何とも面白い。子供がいなければ読むことはなかったかもしれない。

「きゅうりさん・・」「ガッタンゴットン」のようなナンセンスものも大好きなうちの子供たち。将来が楽しみである。まぁ親が読んでいて楽しいから、子供もつられて好きになるのかも。
スズキコウジの絵は本当にすごい。