2010年6月29日火曜日

霞ヶ浦での離岸堤の設置

霞ヶ浦・境島付近で布団籠の離岸堤設置工事を目撃、すぐに河川事務所に行き情報を得た。治水(越波対策)のための事業だが、この工法は底質の悪化などの環境面でのコストを伴う。湖岸植生帯の再生なら、越波対策と自然再生が一石二鳥なのに。7月にこの件で所長と打合せをするアポをとった。

モニ1000調査

環境省モニタリングサイト1000の調査で霞ヶ浦(浮島)へ。夏至の前後1週間以内に行うのが規則だが、夏至の週はアメリカ出張中だったので、この日になった。ギリギリセーフというところか。

ヨシが高く茂っているので、永久コドラートを探すのに苦労した。小雨降っていたし。しかしGarminのGPSは優秀。誤差は±8mと出ていたが、緯度経度でナビゲートさせたらコドラートの位置をぴたりと当てた。

しかしこのような継続性が要求される調査は、チームでないと辛い。あの程度のサンプリングサイズでヨシのサイズを測ることにそれほど意味があると思えないし(←はっ、言っちゃった)。

2010年6月28日月曜日

Seed Ecology 3 (聴講メモ)

ソルトレイクシティーで行われた、第三回種子生態学会議(Seed Ecology III, http://www.seedecology3.org/)に参加してきました。最高に楽しい4日間でした。

発表を聴きながらつくったメモを貼ります。自分用の備忘録なのでわかりにくいと思いますが、興味のある方向けの手がかりとして(かなり少ないと思いますが・・)。そのうち要旨集(各発表1-2頁)が上記ウェブサイトで公開されると思いますが。

全体としては古典的テーマを踏襲した発表が多かった印象。restorationがらみの野生植物の種子保存・発芽条件の検討研究が多かったのが特徴か。これについては色々と思うところがあったので、また別の機会に書こうと思います。

6月21日 進化学的話題と生理学的話題を中心に

クイーンズランド大学のKathryn Steadmanさんを筆頭著者に5人のオーストラリア人研究者の連名による、休眠特性に対する自然選択についての解説と、ネズミムギについての研究紹介。耕地雑草のネズミムギでは、種子休眠の深さと除草剤耐性に強い相関がある。これは規則的な農薬散布の結果、休眠の浅い個体を淘汰してきた結果と解釈できる。

アメリカ在住の中国人研究者(専門は分子遺伝学)Xing-You Guさんによる、イネ(種子休眠性なし)と雑草稲weedy rice(休眠性あり)の休眠特性と、それに関わるQTLマッピング。休眠に関わる11のQTLsを同定。休眠遺伝子は温帯の雑草稲と熱帯の雑草稲に共通しているらしい。

Jerry Baskinは発芽率に対する近交弱勢・外交配弱勢の影響についてのレビュー。Carol Baskin はEpicotyl Dormancy のレビュー。Epicotyl Dormancyとは、幼根が出てから長い期間を経て(通常何らかの刺激を受けて)から使用が出る現象。秋に発芽(幼根出現)し、ひと冬を越してから春に子葉を出すなど。様々な分類群で認められる。

ベルギーのFilip VandelookとSteven Janssensによるセリ科における胚サイズの進化に関わる淘汰の研究。既知の系統関係とKew gardenのSeed Information Databaseを活用して仮説検証。乾燥地のものほど胚サイズ(E:S比)が大きい等いくつかの仮説が支持された。

アテネ大学のCostas Thanosの学生、Katerina Koutsovoulouさんによる世界のCampanulaceaeの植物を対象にした、発芽に対する光要求性についてのスクリーニング。対象としたのは113taxa(111 species, 26 genera)。すべての種で明条件>暗条件。ただし、暗条件による低下の程度は種ごとに異なり、全体として大きな種子は暗条件と明条件の差が小さい。光要求性のある種子は変温感受性がある場合が多い。対象種にはオープンハビタットを好む種が多いことと整合性がある。

中国科学院のHong-Yuan Maさん。ステップ草原で家畜の飼料としても重要なイネ科植物Leymus chinensisの発芽特性。不透水性のglumeによる厚皮休眠。

北大の近藤先生によるスズランの発芽休眠特性。ひと冬越してから幼根出現、次の冬をこしてから子葉出現する。それぞれに環境刺激(低温)が必要(double dormancy)。種子散布直後には胚(子葉)はとても小さく、幼根出現後に大きくなる。また発芽(幼根出現)は光で阻害される(ただし「暗条件」でも計数のときに受光しているので実質は弱光条件)。

西オーストラリアの研究者・共同研究者による、煙発芽(butenolide, karrikinolideの影響)に関連した発表が続く、Kepczynski Walck, Longの各氏。

6月22日 種子分散や更新ニチェに関する話題

砂漠の植物のデモグラフィー研究で有名なLarry Venableさん。28年間にわたる多種のデモグラフィーデータを使い種子の役割を解説。個体群(種)レベルではBet hedging 説の検証:繁殖成功の年変動と年あたりの発芽率の間の負の相関(繁殖成功が不安定な種は少しずつ発芽)。植生(群集)レベルでは、年によって優占種は変わるが種多様性は比較的安定。頻度依存的な種子捕食の実験的検証(多い種類の種子が捕食されやすい)。環境の年変動は、発芽にも種子生産にも影響するが、応答は種によって異なる(decoupled reproduction)。気候変動が個体数と種組成に及ぼす影響についての理論はややこしかったので原著論文を読んで勉強する必要あり(PNAS, Peter Chessonとの研究)。

レーゲンスブルグ大学のPeter Poschlodさん。局所的な環境勾配に沿った植物の分布が発芽ニチェの違いで説明できるか、という問いに答えるために様々な調査・実験を展開している。氾濫原のバックウォーターポンドやため池では水中から陸上までの環境勾配に沿った典型的なエコトーン植生が成立している。多種について発芽と水分条件の関係を分析すると、冠水域の植物と陸域(ヨシ原)の植物は生育場所と発芽条件がよく対応する。その中間域に当たる泥質裸地(mudflat)の植物は水分条件については幅広く応答する。これらでは光や変温などが重要なシグナルになっている。ポシュロードさんの研究室は学生・共同研究者の発表も多く、とてもアクティブな印象。

イスラエルのMarcelo Sternbergさん。高温-乾燥(気候の年間変動・大)の立地から湿潤(気候の年間変動・小)の立地までをカバーするように数箇所のサイトを設定し、それぞれで雨除けの設置/冠水で人工的に気象条件を制御し、植生と土壌シードバンクの動態を追跡。シードバンク密度は場所間での違いは大きいが年変動は小さい。乾燥地ではshrubが種子集積を促進、湿潤地でのshrubは一年生種の多様性を低下させる。乾燥地では種子の最適条件での発芽率が高く、時間的分散が卓越しているらしい。

中国のLiuさん。内モンゴルの砂丘における土壌シードバンク。安定性の異なる砂丘のそれぞれの、Dune slack (erosion zone)と、Middle windward(erosion and burial zone), Upper windward(Burial zone)で土壌採取。意外にタネあり。

オーストラリアの学生Gujaさん。オーストラリア西海岸の13種の海浜植物を対象に海流散布の可能性。種子の海水への浮遊期間と生存の分析。50%以上の種子が2週間以上浮遊していた種は7種あり、そのうち、浮遊期間に発芽率を失うものは1種のみ。長いものでは70日以上浮遊して発芽率を維持していたものもあった(木質の果実を持つものは長い)。発芽における塩分耐性は様々で、浮遊特性との関連性は薄い(生育適地と関連だろう)。

ブラジルのSilveriaさん、中国のWangさん、スペインのFernandez-Pascualさん、様々な植物種・集団の種子をあつめて、同一条件下の発芽率や発芽速度に対する生育場所やその環境条件、系統群などの効果を検討した研究。しかし、発芽実験の条件が種(集団)ごとの最適条件である保証はなく、デザインに問題があるのでは。むしろ最適条件をきちんと明らかにして、その違いに影響する要因を分析しなければならないのでは。

トロント大学のPeter Katonenさん。いろいろな条件・植物で、fungicide ('Capton') vs. water (control) の条件で種子を埋め(シードバッグ実験)、種子生存の比較研究を展開している。森林のギャップは林床に比べて種子が菌病で死亡。ツガ林内のカエデ林内では、ツガ種子はツガ林内において有意に菌病で死亡(Janzen-Connel 仮説に一致)。倒木上は土壌上に比べて有意に菌病にかかりにくいことなど。面白いデータがたくさん。

Becksteadさん。Cheatgrass (Bromus tectrum)火事後に侵入し、優占する外来一年生。この種子に感染する病原菌(ジェレラリストPyenophora semeniperda)に対する火事の影響。温度では菌の生存可能温度と種子の生存可能温度に大差はない(160℃くらい)。特にCheatgrassが火事によって病気にかかりにくくなるわけではない。

Ken Thomson。マメ科などの硬い種皮の適応的意義は、これまで休眠・発芽特性との関係でのみ論じられてきたが、種子捕食者とも関係するのではないか。カラスノエンドウとハリエンジュの種子とハムスターを用いた実験。マメ科のそれぞれの種子の硬種皮/吸水して柔らかくなったもののそれぞれを、シャーレに入れた砂利の表面上/地中のそれぞれに埋め、ハムスターによる捕食を調べた。砂利の上に置いた処理はどのような条件でもすぐに食べられたが、砂利に埋めた種子は吸水した種子のみが掘り出された。吸水し、種皮が柔らかくなることで何らかの揮発性物質が発生しているらしい。でも、これ自体は昔から言われていたことのような。

チェコの農業試験場の研究員Stanislava Koprdovaさん。節足動物による雑草種子捕食の調査。いろいろなサイズのダンゴムシと雑草種子の組みあわせで捕食可能性を実験している。節足動物による種子捕食はとても盛んで、たとえばArmadillidium vulgareは、ナズナやスズメノカタビラの種子をリターといっしょにいれても積極的に食べる。

6月24日 種子の保全と自然再生

ホノルル大学のWeisenbergerさん。絶滅危惧種の種子の系外保存。このような種子保存プロジェクトは世界各地で始まっている。遺伝子保存のための公的プロジェクトだけでなく、植生再生のニーズから、野生植物の種子採集・保存・播種(種苗化)産業化している。このことは、mid-conference fieldtrip での経験も含めて、今回いろいろ考えさせられた。

Kew植物園のJohn Dickieさん。Kewの種子保存プロジェクトでは、24000種以上の種子を集めているが、約2割の種で発芽条件についての情報が全くない。実験では採集場所・採集時期(散布時期にほぼ対応)と、気候情報(WorldClim)www.worldclim.orgから「あたり」をつけるとのこと。この成果は基礎科学としても面白そうだ。

オーストラリアのKings Park and Botanic GardenのLucy Commanderさん。オーストラリアでは鉱山跡地などを中心に65-876haと様々な規模の植生再生計画がある。野生植物の緑化のためにかなりのコストが掛けられている7kg/ha, 200-3500ドル/kg。340,000ドル(2010)。今後種子にかかるコストが莫大になる。効率のよい種子発芽・再生のため、様々な野生植物の休眠発芽特性の解析が進められている。

2010年6月19日土曜日

アサザ巡検メモ(鳩崎・麻生・大船津・爪木)

(調査メモはふつう非公開で作成していますが、アサザの現状は関心をお持ちの方も多いので、ブログに書くことにしました。)

6月17日、国土交通省霞ヶ浦河川事務所とコンサル会社の方々とともに、今年のアサザの様子を見に行った。場所は、鳩崎、麻生、大船津、爪木の4箇所。

全体に、私自身が調査していた3-4年前に比べて占有面積が小さく、残存している場所でも葉はまばらで、「活性が低い」様子だった。全体に共通して意識しておくべきことは、今年は春の日照が少なく気温が低かったため、アサザの生育には厳しい年であるということである。とはいえ、多くの場所では昨年も衰退していたので、今年がたまたま悪い年だったとは考えるべきではないだろう。 ただ、衰退要因はたいてい複合的なため、気象条件が悪い年は、他の要因の影響が通常よりも顕著にあらわれることが考えられる。

鳩崎。1996年まで種子生産がもっとも盛んな個体群が存在していたが、その後消失、「実生のレスキュー」の活動で復活しかかっていた場所である(保全活動の詳細は、高川ほか2009保全生態学研究14: 109-117)。アサザのパッチは上流側の石積み突堤付近にわずかに残るのみだった。残存している個体の様子をよくみると、葉身が失われ葉柄のみが残っているものが多くみられた。もしかすると、食害も個体群衰退の原因となっているのかもしれない。このあたりはコブハクチョウも多いと聞く。根や地下茎は健全な様子で、黒変・壊死(底質が過度に貧酸素になると生じやすい)は目立たなかった。

鳩崎の展葉範囲は極めて小規模になってしまっていたが、ヨシ原では実生を多く見ることができた。また、昨年発見したヨシ原内の陸生型の定着個体も、まだかなりの数が残されていた。陸生型の定着個体は、サイズからすると2-3年目の印象だが、もしかすると切れ藻が打ち上げられて定着したものかもしれない。この点は、遺伝解析が重要だ。個体群の保全のためには、これらの実生個体(それぞれが別のジェネット)を定着させ、水面に展葉できる状態に成長させることが特に重要である。

麻生。小野川の河口部の生育地(鳩崎・古渡)が衰退・消滅したのちの霞ヶ浦では、もっともジェネット数が多く、現在では唯一、両花型の個体が生育している場所である。展葉面積は過去と遜色がない印象だったが、全体に葉が小さく、黄色い葉が多かった。葉が小さいのは今年の気象条件が影響しているのかもしれない。黄色い葉については、ほとんどの場合、葉柄がついた状態で茎からは切れているものだった。何が切ったのだろうか。ザリガニか、釣り人か。この日の調査中もアサザ群落の中で釣りをしている人がいた。現在の霞ヶ浦では、アサザが生育している場所は魚がよく集まっているので、釣りのポイントになる。それは良いのだが、釣り糸が絡まるのを避けるため、アサザを刈り取ったりする人がいるらしい。地下茎を掘り上げてみたが、根や芽が黒変・壊死している様子はなかった。

大船津。かつて比較的広面積に展葉がみられたが(ただし1ジェネット)、消失しかかったため、いったん系外に移植し、湖岸の修復事業後に再導入した場所。再導入後は良好に成長したが、その後、再び大幅に衰退した。現在残っているのも、昨年あたりに再々導入されたものかもしれない。一部で生育が確認されたが、昨年か今年に移植されたものかもしれない。ここでも、鳩崎と同様に葉身のない葉柄が認められた。

爪木。以前から底質が砂~細礫質であることが特徴の場所だが、その様子は今年も変わらなかった。アサザは、葉が極めて疎らになっていた。葉身が失われている様子はここでも認められた。天候のために活性が低いことに加え、食害もあるのかもしれない。地下茎・根は健全な様子だった。

他のアサザ自生地はまた別の機会(7月上旬)に調査する予定だが、とりあえず、ここまでのところで感じたことをメモしておく。

個体群保全のためにはジェネット数の維持がもっとも重要である。個体群の現状把握では、遺伝的マーカーを用いたジェネット数の把握が不可欠と言ってもよい。霞ヶ浦のアサザはジェネット数が極端に減ってしまっているので、個体群維持のためには実生定着の促進を図ることがもっとも重要だ。しかし、現在の霞ヶ浦の不自然な水位管理条件下では、実生定着ができないことがわかっている。(その理由についてはNishihiro &al. 2009 Biological Conservation 142:1906-1912などで述べている。近日中にウェブページにも解説を載せる予定。)高川ほか2009で紹介した「実生のレスキュー」のような人為的措置によってでも、実生からの個体を増やすことが重要である。とはいえ、定着後の「親個体」も軒並み衰退しているので、湖内に導入しても安定的に維持されない可能性が高い。現在、実生が認められる鳩崎地区では、実生周辺のヨシの刈り取りなどにより、陸生型でも良いから個体を維持するとともに、一部を系外に移植して育成することが有効と考えられる。

定着後の親個体(浮葉をつけているステージ)の展葉面積や葉の密度も、各ジェネットの存続性を通して個体群の存続性に影響する。したがって今年確認されたような展葉面積・密度の低下の原因を明らかにし、それが年変動のようなものではなく一方向的な衰退を招くようなものであれば、何らかの措置を講じるべきである。詳しくは今後の調査結果を待つべきだが、今のところ得られている情報と今回の巡検の所見を総合すると、アサザの親個体の衰退は水質や底質の悪化による生理的なダメージや、水位管理による影響よりも、物理的なダメージの影響が強い可能性が高い。もちろん要因は複合的なため、今年は気象条件が不適だったことで、食害者等による物理的なダメージがより顕著に影響している可能性がある。今後の環境調査では、水質・底質の調査だけでなく、食害者の調査(トラップによるアメリカザリガニの調査、観察・撮影による鳥類・釣り人の調査、ソウギョなどの植食性の魚類の調査)を行うことが望まれる。

2010年6月15日火曜日

「はやぶさ」のニュースに思う

「はやぶさ」がこんなに話題になるのはその物語性ゆえだろう。天文学的な価値とは無関係に「苦労しながら長旅をした」物語が人を惹きつけている。

ある地域から生物が消えることを、自然誌の知識がある人がとても悲しく思うのは、物語を感じるからではないだろうか。生態系サービスとか機能的役割とかは無関係に、偶然と必然が作用する進化や生物間相互作用の歴史を通して「この場所に生きることになった」生物の物語に心が動かされる。

そのような物語を感じる「自然誌力」を持った人が増えれば、生物多様性の議論も変わってくるのではないだろうか。

2010年6月13日日曜日

田植え

矢野っちにお誘いいただき、家族4人で石岡に田植えに行ってきました。
チサトはなかなか良い働きをしました。サキはキツネノボタンあつめを楽しみました。
帰りにドジョウをとって帰り、飼い始めました。












2010年6月9日水曜日

[本]生物多様性 入門

岩波ブックレット「<生物多様性>入門」鷲谷いづみ著を読了。60ページのブックレットなので昨日の帰宅電車と今日の通勤電車で読み終わってしまった。

生物多様性とは何か・なぜ守るのか・何が問題なのか、の概要を知るうえで、広くお薦めできる一冊だと思う。知っておくべき重要な点が広くカバーされている。教養の授業や市民講座などのテキストに最適だろう。非専門家向けに書かれているが、GBO3での総括の概要や生物多様性基本法など、最新のトピクスも入っていて、「知っている人」の情報整理にも役立つ。

生物多様性の価値を生態系サービスの面から説明する本は他にも出てきているが、この本は適応進化を通して得られた「情報」の価値が強調されているのが特徴である。生物の絶滅は膨大な時間をかけて得られた「戦略」情報の喪失を意味する、という視点は、「生態系サービス」の中に入れられなくはないが、これまであまり強調されてこなかったのではないか。

テキスト的な性格を意識してか、全体としては標準的な内容が無難に書かれている印象だが、チクリと一刺しした部分も。「昨今、地球温暖化や外来種問題に関して、必ずしも十分な専門的知識をもたない「専門家」の危機の否定・軽視の発言がもてはやされる傾向がある。人々がそれらに同調しがちなのは、まひした心に、それらが心地よく響くからだろう。」以上、抜粋。とても重要な指摘だと思う。気候変動の問題でも標準的な解説書よりも否定的な本の方がよく売れるという。様々な見解が発表されるのはよいことだが、「内容が重くて辛い」「理屈を追うのが面倒」という心理のせいで科学的で丁寧な解説が疎まれ、非科学的・短絡的な主張が跋扈するのは危険なことだ。

2010年6月8日火曜日

6月の三方湖

6月7日は三方湖のヒシ調査。
ヒシは大半が水面まで達して展葉していた。鋤簾作業は難しかったが、予定通りサンプル採集ができた。

船での移動中に下を向いて鉛筆を削っていたら、頬に強い衝撃が。さいしょ誰かに殴られたかと思った。ジャンプした体長30cmほどの大きなボラがぶつかったのだった。ほんとうにびっくり。でもラッキーな感じ。

ヒシの果実食害や病害がけっこう多いように感じた。蔓延っているとはいっても、在来種は地域の様々な生物と相互作用を維持しているということか。

サンプル量が多いので今週はその処理に追われることになる。さらに今週は授業(実習データ解析2コマ)はあるし、国交省との打ち合わせはあるし、金曜日は午前に霞ヶ浦で野取材協力、午後は霞ヶ浦研究会での発表があるので、エライことになりそう。

久々の休日

6月6日は久々の休日なので、子ども二人を自転車の前後に乗せて市内の田んぼ、公園、鳥の博物館をめぐって一日中遊んだ。

去年から、湖岸段丘の斜面林が残されていた場所が伐採され、階段が設置されていた場所が気になっていたので行ってみたら、都市公園的な整備がされていた。林が残っていれば花を摘んだりドングリを拾ったりして遊べるのに、、、まばらな樹木と芝生(低木や下草は一切なし)の景観の方が好まれるのだろうか。手賀沼のまわりの林が減ってしまったこと(湧水にも影響するだろう)、このような景観が善しとされる現実、にとても残念な気持ちになった。
鳥の博物館の展示や紙工作は楽しくて良かったけど。

夕飯を家族と一緒に食べ、翌日の三方湖調査にむけて夜7時に家を出発。
敦賀に11時過ぎに着いた。さいきん、どうしてもお腹がすいてしまって一日4食の日が続いている。気をつけた方が良いとは思うのだが、目が回ったり足がもつれたりするのでしかたがない。

2010年6月5日土曜日

小貝川実習

先週(5月30日)の鬼怒川での実習に引き続き、小貝川での「保全生態学実習」。河川の中流域と下流域の地形や生態系のちがい、河畔林や三日月湖によるβ生物多様性について勉強してもらう。光の測定も経験してもらったが、あまりに天気が良くて、データはかなりあやしい。水曜・木曜のデータ解析の時間にはそのあたりを丁寧に説明しなければ。

6月の日高

6月2日の夜に日高入りし、3日・4日はいつものサクラソウ自生地の植生管理。
周辺は外来種の供給源だらけだが、丁寧に選択的に除去をしていると在来種が優占し絶滅危惧種も多い植生が維持できる。うちの師匠が10年くらい前から続けているが、その効果ははじめて見た人でもよくわかるようになってきた。

外来植物の除去だけでなく、α多様性を高めるためにツル植物なども適宜抑制。植物生態学の実証実験という感じで、私も毎年1,2回手伝っているが、なかなか面白い。

地域の山林は牧場開発や道路建設でかなり失われてしまっているので、潜在的な生物相(γ多様性)の維持拠点として重要な役割をはたしているように思う。このような生物相維持拠点が各市町村くらいの単位であったらいいのに。植生管理は植物が分かる人数名を「緑の雇用」のような感じでお願いできるといい。