2013年2月13日水曜日

朝日新聞「カワウソ日本にもう一度」の記事

今日の朝日新聞の夕刊に載っていた標記の記事に強い違和感。

東京農大の安藤教授という方が、ニホンカワウソとユーラシアカワウソの遺伝解析の結果を踏まえて、別種として区別するほどの差異はなく、亜種とするのが妥当と発表したそうだ。そこまではいい。問題はその教授のコメント「別種の導入は国際的にも認められないが、亜種なら可能。導入に向けて動くなら今だ」ですと。

根本的な誤りは、再導入の可否は社会的な課題であるにもかかわらず、あたかも自然科学から答えが出せるかのように述べている点にある。生物の導入は生態系の様々な側面、ひいては提供される生態系サービスに影響する。生態系サービスの間にはトレードオフがある。相互にトレードオフがあるサービスのどれを重視するかは、人間の価値観に依存する。そのため、関係者の議論と合意形成を通して決められるべきである。DNAの類似性の情報、種/亜種といった分類の情報は、特定の生態系影響評価の参考にはなるが、それで導入の可否が決められるわけではない。

教授の顔写真の隣には「その辺の川でカワウソの親子が泳いでいるのを見てみたい」という言葉が。まさに「価値観」の表明である。科学者個人の価値観を主張する根拠に「科学」を使っちゃうの?

さらに言えば、「種」か「亜種」かというのは相対的なものでしかない。塩基配列の類似性という連続的な物差しの上に、便宜的に引いた区切りである。そのような基準で提言するのは疑問。

さらにさらに、「国際的に認められる」ということを根拠のようにあげている点。。まあ、何というか、情けないです。

このように突っ込みどころ満載。しかもこの記事では、環境省のコメントとして「自治体の判断で自然に放つことはできる」などという表現まで出てきてほんとうに残念だ。