2009年1月15日木曜日

霞ヶ浦の水位

研究フィールドにしている霞ヶ浦の水位は、ほぼ毎日ネットでチェックしている。
今年の冬はYP1.3mという高い水位が長い期間維持される方針だという。今日も1.28m。こんな数字を見るたび、身が削られていく思いがする。この水位は現在の霞ヶ浦の湖岸に辛うじて残されているヨシ原の地面(大抵の場所がYP1.1m程度)を著しく侵食するものだからだ。植物の発芽が始まる3月までヨシ原を冠水させ、発芽の機会を失わせるものだからだ。

水位の問題を指摘する論文を書き、機会があれば発言もしてきたが、まだどうすることもできていない。失われていく植生をみてため息をつくばかりだ。水位管理の効果を検証する「専門家」による委員会もあるが、明らかな植生変化を示すデータを得ながらも「今後も継続したモニタリングが必要」という程度の結論しか出せていない。誰かなんとかして!

水位を直接的に管理しているのは国土交通省と水資源機構という国の機関だが、水位はここの一存で変えられるものではない。水を利用する権利をもつ主体=主に茨城県が「少なくともこの季節はそんなに水はいらない。むしろ生態系を守って欲しい」と声をあげないと。とはいえ、霞ヶ浦も河川法のもと国土交通省が「環境保全」のための仕事をする対象なのだから、自然へのダメージが大きい管理を継続するのは問題である。「環境のために水位を下げて良いですか?」と、はっきり態度を示したらいい。

印旛沼では千葉県の河川行政がいろいろと努力し、保全のための水位管理方針の変更を実現している。実験的に(局所的に)昔のような大幅な水位低下をさせた場所では、念願の沈水植物の再生も実現した。県の職員の方とお付き合いする中で、いろいろな制約の中、将来を見据えて様々な努力をしてくれる意欲的な方が複数いることを知った。茨城県にもそのような方がいるはずだ。いつかそのような方々と協力し、未来によい財産が残せる管理を実現したい。