メーリングリストでの案内をみて早速入手した.
地球規模での農耕の起源と拡散についての研究書である.ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」「文明崩壊」が地球規模での文明一般の拡散史の解説だとすれば,その農耕版といった内容.
丁寧に事実を引用しながら解説されており,科学的な安心感がある.着実に論理を固めながら話題が展開する重厚な構成だ.しかしその分,私のような専門外の読者にとっては難解な場所や(読み物としては)退屈な表現も多い.読み始めてから約一週間たったが,まだ前半しか読み終えていない(通勤電車でしか読んでないけど).それでも,いつくか勉強になった.
○農耕民が狩猟採集民よりも人口過密になれる原因
・食料が集約的に生産できること.
・出産間隔が短くなること.(狩猟採集民は,広い場所で食料を採集している間,子供を運ばなければならいこと,周期的に脂肪摂取が低レベルになること,やわらかい理由食がないために長期間授乳する必要があることが原因)
○農耕の開始が可能になった条件
・意図的な植え付け作業と栽培の季節性の存在(野生植物から栽培植物を隔離することに寄与する条件)
・気候が温暖・湿潤で安定していること(完新世における温暖化(11,500年前に発生)が重要)
○農耕が開始された理由
諸説あるが,豊かさという背景に注目するものと,ストレスに注目するものがある.ストレスとしては,社会的なストレス(部族間の競争など),人口によるストレス(温暖化に伴い食料以外の要因による人口増加が先行しそれをまかなう必要性が発生).
○世界の農耕の起源地
・西南アジア:「肥沃な三日月地帯」(ヨルダン・シリア・トルコ・イラク・イラン)→野生穀類と豆類をともなう疎林と草原で発達した農業→ヨーロッパ,エジプトに拡大
・アフリカ:北部において西南アジアから農業が拡散,在来の牧畜民と融合,サハラの乾燥化に伴って牧畜民が農業技術を携えて南下.
・東アジア:長江の中下流域に稲作の起源.野生の雑穀やコメを栽培河岸,家畜化されたブタ,イヌ,ニワトリを飼育する形態.日本の農業はそこから拡散したものだが,中国国内での農業の伝播に比べて,受け入れに時間がかかったとされる.それは,日本は海産物,堅果類,根茎類の採取が非常にうまくいっていたため,副次的な農業はあったものの,それほど依存度は高くなかったからと解釈されている.
・東南アジア,オセアニア:(・・・複雑すぎてよくわからなかった・・・)台湾とか,いくつか重要な起源地があるらしい.
・南北アメリカ大陸:トウモロコシを除いて生産性の高い穀類がなかたこと,食用になるような動物の家畜化があまりおこらなかったことから,狩猟採集から農耕への以降が旧大陸ほど明瞭ではない.また農業の起源も複数あるらしく,複雑.
8章まで読んだ.9章は「語族は人類の先史に対してどのような意味をもつか」だって.聞いたことのない話題で,楽しみだ.