耕作放棄された谷津田の植生を研究している大学院生、Iさんと調査に行った。フィールドは茨城県鹿嶋市、北浦の東側の水源域だ。
圃場整備の進行、減反、農家の高齢化等々により、もっとも初期から稲作が行われていた場所である「谷津の奥部」ではいま耕作放棄が進んでいる。耕作放棄地の拡大は農政の中で問題視され、土地の活用についての検討が行われている。しかし、特別な「活用」を考えなくても、条件によってはけっこういい湿地になっているんじゃないの?湿地が減少した現在ではむしろ貴重な場所なんじゃないの?というのがこの研究の出発点だ。
長い谷底に果てしなく広がる葦原、ここもかつては水田だった。水田耕作が始まる以前の太古もかくや、と思わせるような景観だ。
耕作という人為から解き放たれた土地は、その場所の条件や履歴によっては、様々な湿生植物から構成される湿地へと戻っていく。生態系のレジリエンスの一例である。
湿地に戻れる条件は?その植生はどんな要因で決まるのか?Iさんのおかげで、かなりのところまでわかってきた。