2009年5月27日水曜日

年齢

さいきんまで、なんとなく自分は36歳だと思っていたが、計算してみたら37歳だった。
思い違いをしていたことに驚いた。

2009年5月25日月曜日

5月の豊岡

5/23-5/25は豊岡へ。4月に設置した防鹿柵の効果は予想通りテキメンで、思ったより早く仮説を支持するデータがとれそう。とはいえ、2年か3年は続ける必要があるが。哺乳類による湿地の攪乱に依存して生息する生物は多い。ヒトが攪乱(耕作)しなくなっても、シカやイノシシが攪乱することで維持されている動植物がいる。

一般に、森林では増えすぎたシカやイノシシが植物に不可逆なまでにダメージを与え、深刻な土壌流出などの問題を引き起こしているとされる。しかし、私たちがフィールドにしている地域の森林ではあまりそのような印象は受けない。ちゃんと調べていないのでわからないが、林よりも湿地(耕作放棄水田)が主要な採餌場所になっているのではないだろうか。

2009年5月22日金曜日

多雲と陰

W君と光の測定のために浮島湿原へ。
Diffuse site factor(散乱光条件下での相対光量子密度)を測るため、天気予報が「曇り」の日を選んだが、あいにく雲は疎らで強風。ときどき「曇り」になるが直後にはピーカンに晴れてしまうので、測定は途中で諦めた。

留学生のW君によると、中国では日本での「曇り」に相当する天気予報の表現には「多雲」と「陰」とがあるそうだ。多雲は基本は青空だが白い雲が多くある状態、陰は空全体が鉛色に曇った状態。なるほど、それなら光の測定は「陰」の日に予定すればよいということになる。

2009年5月21日木曜日

論文の採点

Ecological Researchの査読レポートのシステム(Springerのウェブサイト)では、Accept, Revision, etc.などの判断のほかに、100点満点の評点をつける欄がある。あれはどのように活用されているのだろうか。Rejectではないがギリギリだから60点!なんて、良かったのだろうか。

2009年5月19日火曜日

小貝川で実習の下見

学生実習の準備(下見)で小貝川と霞ヶ浦へ。
小貝川はいつもよりも範囲を広げて、下流の三日月湖の周辺などを少し丁寧に歩く。タチスミレとチョウジソウが開花していた。チョウジソウは丁寧に探すとかなり多くの場所に分布していた。

小貝川では今は堤外地になっている場所も、かつては民家や農地があった場所が多いようだ。その名残で多様な比高や水理条件の場所が存在しており、比較的狭い範囲に、後背湿地的、バックウォーターポンド、自然堤防などに相当するような環境が残され、多様な植物の生育を可能にしているのかもしれない。水の働きだけでは説明できない地形の多様性がある。

2009年5月18日月曜日

参加型調査の呼びかけ開始

アサザの実生調査と湖岸の植物観察会の案内を掲載。植物好きの方ならどなたでも大歓迎です。

7年間続けてきた「市民・研究者協働による湖岸植生のモニタリング」を、少し新しい方向に展開したいと考えている。

2009年5月17日日曜日

5月の一関

14日~16日はレンゲツツジとヤマツツジが満開の一関・萩荘へ。
日本初の完全民間発意の自然再生事業(推進法に基づく事業)である久保川イーハトーブ自然再生協議会の立ち上げの協議会に参加。手始めは溜池への侵入が急速に進んでいるウシガエル・オオクチバス・アメリカザリガニの駆除を進めることに。全体構想と実施計画は今年の正月頃から検討して、すでに完成しており、すぐにも実践が進められる段階だ。

今回の私の調査は、これから手入れが始まる林の「手入れ前」の植生調査。一見して「暗い杉林」のようなところでも、よく調べるとかなりの種が小さく生育して光環境の改善を待ち構えている。手入れの効果は短期ででるだろう。植生の変化に伴うfunctional diversityの変化の評価の仕方など、いくつかアイディアが浮かんで嬉しかった。しかし、林の植生調査なんて何年ぶりだろう。学部生の頃はけっこう種類を覚えたつもりだったが、すっかり記憶から抜け落ちてしまっていて、今回は調査は共同研究者のO氏に活躍してもらい、私は記録係に徹した。

何度来てもこのフィールドは素晴らしい。「日本の里山100選」にも選ばれている地域だが、それも納得である。気になったのは畦で優占するハルガヤと道端で目立ち始めたハルザキヤマガラシ。道路工事が行われている近くでとくに多い気がする。

農業生態系に依存した生物を残していくための課題はいろいろとあるが、外来種対策はもっとも緊急性の高いものの一つだろう。いくら里山に対する社会の評価が好転しても、ある程度以上蔓延してしまっては取り返しがつかない。


(サワオグルマの写真をとるO氏。休耕田にはたいていサワオグルマが生える。この季節とても目立っていた。いっしょに行ったトンボやさんのK君が外来種と思ったというのもうなずける。)

2009年5月12日火曜日

実生調査

11日・12日はW君と浮島湿原で実生の計数とマーキング。1000個体以上の実生を数えたかな。湿地植物のnursery effectについての仮説を検証する研究の核心となるデータをとることができた。予想通りの部分と、予想外の部分があった。コケは環境次第で実生にとってのfacilitatorにもcompetitorにもなるのかもしれない。

蒸し暑い湿地にしゃがみこんで、顔を地面に近づけ、単子葉植物の実生の同定をするのは、体力以上に神経が磨り減る作業だ。今年研究を始めたばかりのW君が難しい同定をきちんとこなせていたのには、正直に言って驚いた。センスと根気の両方がなければできないことだ。

作業はつらかったがヤナギトラノオの大きな群落をみつけてハッピーに。


研究計画をたてた時点でもっとも大変と思っていた作業が終了して一安心。

2009年5月9日土曜日

高校生と観察会

3日連続で行われているJBONミーティングを中抜けさせてもらい、今年度JSTの公募企画であるサイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)をいっしょにやっている小山西高校の生徒さんたちと、渡良瀬遊水地での植物観察会、植生調査、学校でやっている実験の経過観察に行ってきた。

必修授業ではなく希望者のみの参加のせいもあるかもしれないが、高校生はみなとっても熱心に、暑い中の野外調査に取り組んでくれた。「こんなに価値のある場所が近くにあるとは思わなかった」という話し声が聞こえたので、とりあえずの目標は達成できたかな。

しかし、あらためて丁寧に植物の様子を見ながら歩いてみると、渡良瀬遊水地の植生の成立を説明するのは難しい。特に、ヨシ・オギ・セイタカアワダチソウという大型で優占群落をつくる連中の分布が、普通のように「比高(~水分条件)」と「攪乱の履歴」では説明が出来ない。この難しさには度重なる掘削(土砂採取)の経歴が影響しているのかもしれない。たとえば浅く掘削すると地下茎がより深いヨシが残りやすく、深く掘削すると比高が低くても(その後の降水量などによっては)オギが優占するとか。とにかく他の湿地での「常識」が通用しないように思う。とてつもない価値とポテンシャルがあるけれど、同時にとてつもなく「理解が難しい」湿地だ。

しかし暑かったなぁ。睡眠不足にはちょっと堪えた。

2009年5月8日金曜日

JBONミーティング

日本での生物多様性観測ネットワーク(JBON)の第一回会合に参加した。既存の様々な生物・生態系調査データを統合的に活用し、ローカル~グローバルまで様々なスケールでの現状把握や予測に役立てる体制を整備しよう、ということがコンセプト。来年名古屋で開かれる生物多様性条約締約国会議で話題になるポスト2010年目標や、その到達度評価といった国際的なニーズもあり、「生物多様性の現状把握」の手法開発とデータベース整備が急速に求められるようになっている。

知らなかった沢山のことを効率よく勉強することができ、とても有益だった。
以下、印象に残った議論メモ。
「様々な活動の生物多様性への影響を評価し、CO2排出権のように、Cap&Tradeされる時代は確実に来るだろう。そのとき、Ecological Footprintは有効な指標となるのではないか。」
「地方分権が進めば河川水辺の国勢調査のような長期モニタリングは継続が難しくなるだろう。」
「IPCCレポートと比べて生物多様性に関するレポートが社会的に権威をもち得ないのは、生物多様性研究者の間での議論の不十分さに一因がある。」
「生物多様性概念を構成する重要な要素である『固有性』の評価手法には課題が多く残されている」